借りるときのチェックポイント

不動産基礎知識【賃貸篇】 借りるときのチェックポイント

①不動産取引の流れ

住まいを借りるまでの流れ
不動産会社の立場や業務を理解する

不動産会社は、住まい探しの段階では、「貸主」または「仲介会社」として、入居後は「管理会社」としてかかわることがあります。不動産会社の立場によってかかわり方が変わってきますので、しっかりと理解しておきましょう。

賃貸業務(貸主)不動産会社が所有している物件を借りる場合、借り主は、不動産会社と直接交渉して、賃貸借契約を結ぶことになります。なお、不動産会社が所有者から一括で賃借した物件について、借り主に転貸するという形で賃貸借契約を結ぶこともあります。
仲介業務不動産会社は、借り主の住まい探しから入居までの全般をサポートします。物件の紹介や見学、貸主への入居申し込み、物件や契約条件の説明、賃貸借契約の締結や入居手続きのサポートなどを行います。
管理業務不動産会社は、貸主との管理委託契約に基づいて、入居者や物件の管理を行います。例えば、貸主が入居者管理を委託している場合、借り主は、入居後の賃料の支払いや設備の故障などの連絡、その他苦情の申し入れなどを管理会社に対して行います。ただし、管理業務の内容は、貸主との契約内容によって大きく変わります。 また、不動産会社が貸主の場合は、その不動産会社が直接管理業務を行うこともあります。
宅地建物取引業とは

宅地建物取引業(=宅建業)とは、 (1)自らが行う宅地や建物の売買や交換 (2)売買や交換、貸借をするときの代理や媒介 を業として行うものをいいます。 宅建業は、「宅地建物取引業法」という法律の規制によって、国土交通大臣または都道府県知事の免許を受けた者でなければ営むことができません。国土交通大臣免許か、都道府県知事免許かは、事務所(本支店等)の設置状況によって決まります。宅建業の免許の有効期間は5年です。 ここで注意したいのは、大家から依頼を受けて行う貸借の仲介(入居者募集など)は宅建業に含まれますが、自らが行う貸借(貸しビルやアパート経営をする行為など)は宅建業に含まれず、宅地建物取引業の規制の対象業務ではないことです。

②相場を知る

賃料相場は様々な要因に左右されます。特に、立地と物件の特徴の影響を強く受ける傾向があります。住まいを借りるに当たって、予算の目安を立てるためには、「賃料相場」を知っておくことが必要です。

(1) 個別の物件の賃料を知る

住まいの賃貸借の場合、一般的には募集時の賃料と、実際の契約賃料との差はあまり大きくないといわれています。そこで、まずは広告等に掲載されている物件の賃料情報を調べることで、ある程度の相場を把握することができます。ただし、実際に取引される賃料と掲載された賃料が一致するとは限りませんので、あくまでも参考情報として活用してください。

(2) 各地域の相場動向を知る

各地域の平均的な賃料相場やその動向については、様々な統計情報が公表されています。 それらを調べることによって、エリアごとのおおむねの賃料相場やその変動を把握することができます。また、そのエリアの情報を多く扱っている不動産会社から相場情報を聞くことも有効です。

③住環境を調べる

インターネットで収集できる情報自治体による住宅関連助成、子育て支援、その他行政サービス災害時に危険な場所や避難場所犯罪の発生状況や危険な地域学校や公園、病院、図書館、その他施設の所在状況  など
実地で確認すること使う経路(道筋)に死角や治安が不安な場所がないかなど、防犯に関することスーパーや商店街の場所、品揃え、営業時間など生活の便利さに関すること騒音や臭い、振動などの原因になる施設  など

④予算を決める

賃料の目安の立て方

(1) 確実な収入ベースで考える

予算を考える際、大事なことは確実な収入をベースに設定するということです。 会社員の場合、残業代や賞与などの収入もあるでしょう。しかし、それらの臨時的な収入は変動する可能性がありますので、確実な収入をベースに希望の賃料を検討しましょう。

(2) 賃料の目安は手取り月収の3分の1以下

毎月無理なく支払える賃料の目安は、民間の賃貸住宅を借りる場合には手取り月収の3分の1以下といわれています。例えば手取り月収が18万円の人であれば、その3分の1である6万円が目安というわけです。ただし、月収の額によって、3分の1の重みが違うため、あくまで目安として考えましょう。

(3) 賃料以外の支出を確認する

住まいを借りるための支出は賃料だけではありません。物件によっては管理費(共益費)、駐車場代などが必要な場合もあります。予算を決める際には、これらも含めて考えるようにしましょう。

契約時に必要な初期費用

住まいを借りる契約をする際には、賃料の数ヶ月分というまとまった初期費用が必要になりますので、事前に確認しておきましょう。

項目支払う相手内容
礼金貸主礼金とは、貸主に住まいを貸してもらう謝意を表すものとして支払う費用です。一般的に賃料の1ヶ月分、2ヶ月分の場合が多いですが、礼金を授受しないこともあります。
礼金は、正式に賃貸借契約をする際に支払うもので、退去しても返還されません。
礼金の取り扱いは、地域の取引慣習のほか、周辺の市場動向によっても変わる可能性があります。
敷金貸主敷金とは、新規契約の際、賃料や補修費用等の支払いを担保する目的で、貸主が借り主から預かるものです。一般的に賃料の1ヶ月分、2ヶ月分などという例が多くなっており、賃料の滞納や、借り主に原因のある損傷や破損などの補修費用がなければ、基本的には退去時に全額返還されます。ただし、地域の取引慣習によっては、敷金の一部を返還しないことを契約条件としていることもあります。(このような取り扱いは一般的に「敷引(しきびき)」といわれています。)
前絵家賃貸主一般的に、賃料は翌月分を前払いします(ただし、後払いの場合もあります)。そのため、契約時には、次回の賃料支払日まで日割り計算した賃料を支払うことが一般的となっており、これを前家賃といいます。ただし、次回賃料支払日までの日数が少ない場合には、その翌月の賃料も合わせて支払うこともありますので、事前に確認しておく必要があります。
仲介手数料不動産会社住まい探しに当たって、不動産会社に仲介を依頼した場合、貸主との契約時に月額賃料の0.525ヶ月分の範囲内で仲介手数料が必要となります。なお、物件によっては、最大で月額賃料の1.05ヶ月分の範囲内で必要となる場合もあります。(いずれも消費税含む。)
損害保険料保険会社入居中に借り主の責任によって起きた火災や水漏れなどの損害を、貸主や損害を与えた他の入居者などに補償するために加入するものです。一般的に、借り主の保険加入が契約条件となっていることが多くなっています。
保険の種類によって、補償される範囲、補償額などの補償内容は異なりますが、契約条件に合う補償内容であれば、どの保険会社の保険に加入するかは、借り主が選択できることが多いようです。
保証金家賃保証会社借り主に連帯保証人がいない場合に、連帯保証の代行を家賃保証会社に依頼する際に支払います。万一、借り主に家賃滞納があった場合は、家賃保証会社が一定の範囲で家賃を立て替えます。

⑤住まいを探す

住まい探しには、情報収集が不可欠です。物件情報の収集方法には、以下のようなものがあります。

物件情報を集める

(1) インターネット・・・不動産情報総合サイト、個別の不動産会社のサイト

(2) 不動産情報誌等・・・地域の不動産情報誌、新聞、チラシなど

(3) 不動産会社・・・希望物件近辺の不動産会社を訪問し情報を得る

物件を見学するときのチェックポイント

気に入った物件があったら、実際にその物件を見学し、周辺環境などを歩いて確認をすることで、満足いく住まい選びをしましょう。

(1) 物件の見学でのチェックポイント

(2) 周辺環境のチェックポイント

(3) 防犯面のチェックポイント

⑥不動産会社を選ぶ

住まいを借りる場合、信頼できる不動産会社を選ぶことはとても重要です。まずは、不動産会社各社の特徴や基本的な情報を確認しておきましょう。

不動産会社の基本情報をチェック

不動産会社の基本的な情報は、インターネットや行政機関(宅地建物取引業者の場合)などで調べることができます。住まいを探すに当たって、不動産会社に仲介を依頼する場合には、確認しておくとよいでしょう。

項目チェックポイント
宅地建物取引業の免許番号不動産の売買や仲介を行うためには、宅地建物取引業の免許が必要です。複数の都道府県に事務所(本支店等)を構える会社は国土交通大臣の免許、1つの都道府県にのみ事務所(本支店等)を構える会社は都道府県知事の免許で営業しています。免許番号は不動産広告には必ず記載されていますので、確認しておきましょう。
宅地建物取引業者名簿各行政庁(都道府県庁)で、「宅地建物取引業者名簿」を確認することができます。この名簿には、免許の年月日、役員の氏名、すべての事務所(本支店等)の所在地、過去の行政処分の状況、他の事業の兼業状況などが記載されています。この名簿を見れば、不動産会社の概要を知ることができます。
不動産会社の取引態様を確認する

不動産会社の取引態様によって、 法規制の有無や契約までの手続き、仲介手数料の有無などが変わります。取引態様の違いについて、よく理解しておきましょう。

取引態様取引態様の意味宅地建物取引業法の規制仲介手数料重要事項説明
媒介
(仲介)
不動産会社が貸主と借り主の間に立ち、契約成立のための業務を行う適用あり一般的には必要義務あり
代理不動産会社が貸主の代理人として、募集や契約等の手続きを行う適用あり基本的には必要ない義務あり
貸主貸主自らが所有する物件を直接賃貸する適用なし必要ない義務なし

⑦入居の申し込みをする

物件見学をした上で借りたい物件が決まったら、その物件を借りるための申し込みをします。

申込手続きの流れ

(1) 安易な申し込みは避ける

入居の申し込みをした後は、契約・入居に向けた具体的な準備が始まります。安易に申し込みをしてしまうと、貸主や不動産会社だけでなく、ほかに入居を検討していた人などにも迷惑をかけてしまうこともあります。申し込みの前に、自分の希望条件に合うか、予算に問題はないかなど、しっかりと判断するようにしましょう。

(2) 入居の申し込みをする

申込書は不動産会社が独自に書式を定めていることも多いですが、一般的には、入居希望者の住所、氏名、連絡先、勤務先、年収、勤続年数などを記入します。また、連帯保証人を立てる場合は、その人の住所、氏名、連絡先、勤務先なども記入します。特に連帯保証人を依頼する人には、事前に承諾を得ておくようにしましょう。

(3) 申し込み後の入居審査とは?

入居申込書やその他の提出書類の内容などに基づき入居審査を行います。主に、収入や勤続年数などから家賃の支払いに支障が出ることはないか、などがチェックされます。

⑧賃貸借契約を結ぶ

物件の内容や契約条件について納得できたら、賃貸借契約を締結します。 いったん契約を締結した後に一方的に解約を申し出ても、それが認められるとは限らず、違約金等が発生する可能性もありますので、 事前に契約内容を十分に確認することが重要です。

賃貸借契約のチェックポイント

(1) 契約期間と更新の定め

契約が普通借家か定期借家かを確認した上で、契約期間を確認します。その上で、契約の更新手続きや更新料の有無を確認しましょう。更新料が必要な場合は、金額、支払い条件なども見ておきます。

(2) 賃料や管理費(共益費)の額、支払い、滞納時のルールなど

まずは賃料や管理費(共益費)の額と支払い方法、支払い期日を確認します。多くの場合は、振り込みや自動引き落としで、翌月分を前月末日までに支払うことになっています。また、滞納時に延滞金が必要な場合には、延滞利率についても確認しましょう。 また、賃料の改定についての取り決めがある場合には、その内容も確認します。一方的に賃料が増額となるなど、賃料改定でトラブルとなる場合もありますので注意しましょう。

(3) 敷金など

敷金などが必要な場合には、その金額と返還に関する具体的な手続きなどを確認します。特に、敷金と退去時の原状回復費用との精算をめぐるトラブルは多いので、原状回復に関する取り決めも含めてしっかりと確認しましょう。なお、敷金については、地域ごとの取引慣習により取り扱いが違う場合もありますので、事前に確認しておきましょう。

(4) 禁止事項

禁止事項の例としてはペットの飼育、楽器演奏、石油ストーブの使用、勝手に他人を同居させること、無断で長期不在にすること、危険物の持ち込みなどがありますが、契約によって異なります。違反した場合、退去を求められることもありますから、よく確認してルールを守った暮らしをしましょう。

(5) 修繕

入居中の物件の修繕に関する取り決めです。一般的には、通常の物件の使用に必要な修繕は貸主が行うこととなっていますが、借り主の故意や過失によって必要となった修繕は、借り主が行うこととなります。このような取り決めが不明確な場合は、入居中のトラブルとなることもありますので注意しましょう。

(6) 契約の解除

貸主からの契約解除の要件などが取り決められています。例えば、賃料などを滞納した場合や、借り主が禁止事項に違反している場合などが挙げられます。契約解除とならないよう、十分に確認する必要があります。

(7) 原状回復の範囲と内容

賃貸借の契約で最もトラブルになりやすいのが原状回復にかかわる取り決めです。トラブル回避のためには、原状回復に関する取り決めをできるだけ明確にしておくことが大切です。 退去時の修繕等の義務については、「借り主の通常の居住、使用による物件の破損、損耗」は貸主の負担で、「借り主の故意や過失などによる物件の破損、損耗」が借り主の負担とされます。ただし、本来は貸主負担とするべきものを、借り主負担としている特約がある場合もあります。その場合には、内容について詳細を確認し、特約に定める負担に納得がいくようであれば、契約するようにしましょう。

(8) 特約事項

貸主の事情により、特約事項が付されることもありますが、「原状回復にかかわるすべての費用は借り主負担とする」など、一方的に借り主に不利な条項が記載されている場合もありますので、確認する必要があります。また、借り主側で個別の要望がある場合は、後になって「そんな約束はしていない」と言われないよう、契約書に記載してもらうことが望ましいでしょう。例えば、入居前に壁紙を新しいものに張り替えるなどの約束は、契約書に記載しておくと安心です。

⑨入居時に行うこと

退去時のトラブルは、入居時に注意することである程度回避できます。 そのためには入居後すぐに室内の現況を確認し、記録を残しておきましょう。


※注意事項・・・この基礎知識は住宅等の賃貸契約を円滑に進めるための一般的な参考情報であり、断定的な判断材料等を提供するものではありません。