買う時のチェックポイント

不動産基礎知識【売買(住宅)篇】 買うときのチェックポイント

住まい探しを始めてから、購入物件の売買契約を結び、実際に入居に至るまでの重要なポイントを網羅しています。 自分がどの段階にいるか、どんな点に不安があるかによって、該当する項目をじっくり読んで、満足度の高い住まい選びを実現させましょう。

①不動産取引の流れ

住まいを借りるまでの流れ

宅地建物取引業とは

宅地建物取引業(=宅建業)とは、 (1)自らが行う宅地や建物の売買や交換 (2)売買や交換、貸借をするときの代理や媒介 を業として行うものをいいます。 宅建業は、「宅地建物取引業法」という法律の規制によって、国土交通大臣または都道府県知事の免許を受けた者でなければ営むことができません。国土交通大臣免許か、都道府県知事免許かは、事務所(本支店等)の設置状況によって決まります。宅建業の免許の有効期間は5年です。 ここで注意したいのは、大家から依頼を受けて行う貸借の仲介(入居者募集など)は宅建業に含まれますが、自らが行う貸借(貸しビルやアパート経営をする行為など)は宅建業に含まれず、宅地建物取引業の規制の対象業務ではないことです。

②相場を知る

住まいを買うと決めたら、大きな検討課題となるのが「価格」です。不動産は個別性が非常に強い資産であるため、売り出されている価格が妥当なのか、その判断が極めて難しいという特徴があります。特に、仲介物件では、売り主と買い主の交渉により最終的な売買価格を決めることになります。まずは、不動産価格に関する基本的な考え方と評価手法等を少しでも理解するようにしましょう。

不動産価格の考え方

(1) 同じ不動産は存在しない

不動産には一つとして同じものが存在しません。同じ地域の土地でも、土地の形、面積、方位、接する道路の状況などによって、価格が大きく変わることがあります。また、同じ棟のマンションでも、階数、間取り、部屋の方位、管理状況などによって価格は変わります。このように、不動産価格の妥当性を判断する場合には、不動産の特徴(これを一般に「個別性」といいます)を踏まえて、物件ごとに検討する必要があります。

(2) 取引時点が変われば価格は変わる

不動産市場にも、全体的な相場の動きがあります。たとえ同じ不動産であっても、取引する時期が変われば、価格も大きく変わる場合があります。したがって、不動産価格を判断する場合には、市場全体の動向も踏まえて、取引時期に応じて検討する必要があります。

(3) 最終的には売り主と買い主の合意が前提

不動産売買は、スーパーなどで買い物をするように、提示された金額に対して「買うか、買わないか」の二者択一で成立するものではありません。売り主と買い主が個別に希望条件を調整し、合意したときにはじめて価格が確定します。

不動産の価格情報や相場情報を調べる

(1) 特定の地点の価格情報について調べる

売買しようとする不動産の価格を知る上で参考となる取引事例やその他の価格情報は、簡単に入手できるものではありません。ここでは、比較的容易に入手できる個別の価格情報を物件種別ごとに紹介します。

物件種別 価格情報 実施機関 内容
土地 地価公示 国土交通省 公的機関が評価した価格※1
地価調査 都道府県 公的機関が評価した価格※1
土地総合情報システム 国土交通省 不動産の購入者へのアンケート調査で把握した実際の取引価格情報
不動産価格指数
(住宅)
国土交通省 不動産の購入者へのアンケート調査で把握した実際の取引価格情報を基に物件の立地や特性による影響を除去して指数化したもの
新築マンション インターネット広告等   販売中の物件の売り出し価格情報 ※2
中古マンション インターネット広告等   販売中の物件の売り出し価格情報 ※2
レインズ・マーケット・インフォーメーション 指定流通機構 宅地建物取引業法に基づいて収集した実際の取引価格情報
不動産価格指数
(住宅)
国土交通省 不動産の購入者へのアンケート調査で把握した実際の取引価格情報を基に物件の立地や特性による影響を除去して指数化したもの
一戸建て
(新築・中古)
インターネット広告等   販売中の物件の売り出し価格情報 ※2
レインズ・マーケット・インフォーメーション 指定流通機構 宅地建物取引業法に基づいて収集した実際の取引価格情報

(2) 各地域の市場動向について調べる

各地域の平均的な相場や価格の上昇・下降といった傾向は、比較的入手しやすい情報です。 それらを調べることによって、エリアごとのおおむねの価格帯やその変動を把握することができ、物件の条件(対象エリア・価格帯等)や予算などを検討していくときに活用することができます。

③住環境を調べる

インターネットで収集できる情報
  • 自治体による住宅関連助成、子育て支援、その他行政サービス
  • 災害時に危険な場所や避難場所
  • 犯罪の発生状況や危険な地域
  • 学校や公園、病院、図書館、その他施設の所在状況  など
実地で確認すること
  • 使う経路(道筋)に死角や治安が不安な場所がないかなど、防犯に関すること
  • スーパーや商店街の場所、品揃え、営業時間など生活の便利さに関すること
  • 騒音や臭い、振動などの原因になる施設  など

④予算を決める

購入費用の基本的な考え方

(1) 住宅の購入に必要な予算の全体像を知る

物件の購入資金だけ用意できれば住まいを買えるわけではありません。税金や登記費用、住宅ローンの諸費用、引っ越し費用、家具家電・カーテンの購入資金などが必要となります。その他、新築マンションの場合は、購入時に数十万円の修繕積立基金が必要なケースも多く、また、仲介物件の場合は、不動産会社への仲介手数料がかかります。
つまり、住宅を購入するには、物件価格にこれらの諸費用を加えた資金を用意する必要があります。 こうして計算された住宅購入に必要な資金(物件価格+諸費用)については、自己資金や住宅ローンの借り入れなどによって支払う必要があります。

物件価格 + 諸費用 = 自己資金 + 住宅ローン

(2) 自己資金から頭金に充てられる金額を知る

預貯金などの自己資金のうち、住宅購入の頭金に充てられる金額を計算してみましょう。
まず、住宅購入後の生活費や教育等にかかる支出などを踏まえて、自己資金のうち手元に残す額を検討し、住宅購入資金に充てる金額を決めます。
そして、住宅購入資金に充てる自己資金から、購入にかかる諸費用を差し引いた金額が住宅購入の頭金となります。

頭金 = 自己資金の総額 − 当面の生活費等 − 住宅購入にかかる諸費用

⑤住まいを探す

住まいの購入に当たっては、マンションにするか一戸建てにするか、あるいは新築物件にするか中古物件にするかなどの検討も必要です。
そのためには、購入後の生活を思い描き、どんな生活をしたいのか、それを実現するためにはどんな住まいがよいのかなど、家族で話し合うことが大切です。

不動産広告の見方

(1) 新築・中古の別

不動産広告では、建築後1年未満、かつ未入居(誰も住んだことのない状態)を「新築」と表示します。それ以外の物件は「中古」と表示されます。

(2) 現地写真

原則として、実際に販売するものでなければ広告に掲載してはならないことになっています。ただし、建物が建築工事の完了前などの場合は、実際に販売する建物と同じものであれば、他の物件の写真をその旨を明らかにして使用できることになっています。
また、周辺の施設を紹介する場合は、販売する物件との距離を明示する必要があります。

(3) 価格

建物にかかる消費税込みの価格が表示されます。

(4) 駅等までの距離

徒歩による所要時間は、駅からの道路距離80mを1分として計算されます。信号の待ち時間や歩道橋の上り下り、坂道、道路の横断などにかかる時間は考慮されていません。また、改札口からではなく、物件にいちばん近い駅の出入り口が基準になるため、ホームまではもっと時間がかかることもあります。

(5) 所在地(地番)

物件の所在地は、新築分譲住宅の場合は地番まで表示されます。中古住宅の場合は、地番は省略できるため記載しないことも多いようです。また、地番は登記記録(登記簿)に表示された地番のことで、一般的に使われる住居表示の番号とは異なる場合があります。

(6) 取引態様

広告を掲載している不動産会社の立場が「売り主」か「代理」か「媒介(仲介)」かが、必ず明示されます。この取引態様によって、仲介手数料が必要であるかが決まります。

(7) 免許番号

不動産会社名と免許番号が記載されますので、不動産取引に必要な免許を受けているかどうかの確認をしましょう。( )内の数字は免許の更新回数で、数字が多い程営業年数が長いことを示します。

現地見学時のチェックポイント

気に入った物件があったら、実際にその物件を見学し、周辺環境などを歩いて確認をすることで、満足いく住まい選びをしましょう。

(1) 周辺環境を確認

(2) 現地見学のチェック項目<新築物件編>

(3) 現地見学のチェック項目<中古物件編>

⑥不動産会社を選ぶ

不動産購入の場合、信頼できる不動産会社を選ぶことはとても重要です。まずは、不動産会社各社の特徴や基本的な情報を確認しておきましょう。

不動産会社の基本情報をチェック

不動産会社の基本的な情報は、インターネットや行政機関(宅地建物取引業者の場合)などで調べることができます。住まいを探すに当たって、不動産会社に仲介を依頼する場合には、確認しておくとよいでしょう。

項目チェックポイント
宅地建物取引業の免許番号不動産の売買や仲介を行うためには、宅地建物取引業の免許が必要です。複数の都道府県に事務所(本支店等)を構える会社は国土交通大臣の免許、1つの都道府県にのみ事務所(本支店等)を構える会社は都道府県知事の免許で営業しています。免許番号は不動産広告には必ず記載されていますので、確認しておきましょう。
宅地建物取引業者名簿各行政庁(都道府県庁)で、「宅地建物取引業者名簿」を確認することができます。この名簿には、免許の年月日、役員の氏名、すべての事務所(本支店等)の所在地、過去の行政処分の状況、他の事業の兼業状況などが記載されています。この名簿を見れば、不動産会社の概要を知ることができます。
仲介手数料について

仲介手数料に関するトラブルを防ぐには、仲介手数料に対する法規制や媒介契約の締結時の注意点を押さえておきましょう。

(1) 仲介手数料には上限がある

宅地建物取引業法により、不動産会社が受け取ることのできる仲介手数料には上限額があります。したがって、不動産会社が上限額を超える仲介手数料を受け取った場合は、法令違反となります。また、法令で定められているのはあくまでも上限額ですので、当然に上限額を請求できるということではありません。

(2) 仲介手数料は売買契約が成立して初めて発生する

不動産の取引の仲介では、売買契約が成立したときに不動産会社の仲介手数料の請求権が発生します。したがって、売買契約が成立するまでは、原則として、不動産会社に仲介手数料を支払う必要はありません。

【仲介手数料の上限額】
不動産会社に支払う仲介手数料は、以下の通り売買代金の金額区分ごとに上限が定められています。

依頼者(売主、買主)の一方から受領できる報酬額
取引額報酬額(税抜)
取引額200万円以下の金額取引額の5%以内
取引額200万円を超え400万円以下の金額取引額の4%以内
取引額400万円を超える金額取引額の3%以内

※仲介手数料は消費税の課税対象なので、別途消費税がかかります。

⑦購入の申し込みをする際の注意点

買いたい物件が決まったら、購入の申し込みをする前に、希望条件に合う物件か、問題点はないかなど、再度確認をした上で購入の申し込みを行います。

購入の申し込みからの交渉の流れ

(1) 新築分譲物件の場合

一般的に、新築分譲物件の購入の申し込みは、現地の販売事務所で行われます。購入の申し込みに当たっては、「申込証拠金」(5万~10万円程度)といわれるお金を支払うことも多いようです。
申込証拠金は、購入意向が確かであること(「ひやかし」ではないこと)を示すことなどを目的に支払われるもので、契約が成立したときには、手付金や物件の購入代金に充当されます。

(2) 中古物件の場合

中古物件の場合、購入の申し込みは、「買付証明書」などと呼ばれる書類を作成し、不動産会社を通して売り主に渡されることが多いようです。
買付証明書とは、購入希望価格、代金の支払い条件、引き渡し希望日などの基本的な購入条件を記載し、署名・捺印したもので、「私はこの物件を、こういう条件で買いたい」という具体的な購入希望を伝えた上で、優先的な個別交渉の開始を求めるものです。なお、中古物件の場合は、申込証拠金などの支払いは不要な場合が一般的です。

⑧売買契約を結ぶ

重要事項の説明を受け、契約条件について買い主・売り主双方が合意したら、売買契約を締結します。いったん契約を締結すると、簡単に解除することはできませんので、事前に契約内容を十分に確認することが重要です。

手付金について理解する

不動産売買契約では、契約締結時に「手付金」と呼ばれる金銭を、買い主が売り主に支払うことが一般的です。 手付金には、 (1)証約手付 (2)解約手付 (3)違約手付 の3種類があります。 一般的に不動産売買契約では、(2)の「解約手付」として授受されます。なお、民法でも手付金の性質について特段の定めがない場合には解約手付と推定するとされています。 「解約手付」とは、買い主は既に支払った手付金を放棄する(返還を求めない)ことにより、また、売り主は既に受けとった手付金の倍額を買い主に返すことにより、売買契約を解除することができる手付けをいいます。 ただし、解約手付による契約の解除ができるのは、「相手方が履行に着手するまで」とされています。つまり、既に相手方が契約に定められた約束事を実行している場合には、手付けによる解除はできません。

【 主な契約解除 】

クーリングオフによる解除売り主が不動産会社(宅地建物取引業者)で、かつ一定の条件を満たす場合に限り、無条件で契約を解除することができる。
手付解除相手方が契約の履行に着手するまでは、手付金の倍返し、または放棄により契約を解除することができる。
危険負担による解除天災により物件が毀損した場合に、過大な修復費用がかかるときは、売り主は無条件で契約を解除することができる。
瑕疵担保責任に基づく解除物件に重大な瑕疵(欠陥など)があった場合に、その瑕疵により契約の目的が達せられない場合は、買い主は無条件で契約を解除することができる。
特約による解除
(ローン特約など)
特約の内容に応じて解除することができる。例えば、「ローン特約」の場合なら、買い主に落ち度がなくても住宅ローンを受けられなかった場合に、買い主は無条件で契約を解除することができる。
合意による解除当事者の合意に基づく条件で契約を解除することができる。
売買契約の流れ

重要事項説明を受け、契約内容や物件について納得したらいよいよ売買契約の締結です。 買い主と売り主が集合し、売買契約書を読み上げて契約内容の最終確認をします。その上で、契約書に署名・押印し、手付金等の授受を行います。手付金等は、現金や指定口座への振り込みのほか、預金小切手で用意する場合もあります。 また、不動産会社が仲介に入っている場合は、契約時に仲介手数料を支払うことも多いようです。

契約時に必要な主なもの

手付金等代金の20%以内が一般的(現金・振り込み・預金小切手など)
※必ず領収書を受け取る
印紙売買契約書に貼る。代金が1,000万円超5,000万円以下の場合の
印紙代は1万5,000円
印鑑実印であることが多い
不動産会社への
仲介手数料
媒介契約書であらかじめ取り決めた金額(現金・振り込み・預金小切手など)
※必ず領収書を受け取る
本人確認書類運転免許証や各種健康保険証などの公的機関が発行した本人確認書類

⑨不動産の引き渡し

引き渡しに当たっては、買い主は残金や諸費用、必要書類の準備をします。引き渡し時までに、不動産会社に十分確認した上で漏れのないよう準備しましょう。


※注意事項・・・この基礎知識は住宅等の賃貸契約を円滑に進めるための一般的な参考情報であり、断定的な判断材料等を提供するものではありません。